ミドルネーム考

オバマ次期大統領のミドルネームはわざわざ表記するが、マケイン大統領候補やブッシュ現大統領やクリントン前大統領のミドルネームは記載しない新聞のコラム(「http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/783913/」)*1に触発されて日本人のミドルネームについていささか考えてみたい。
ブッシュ現大統領の場合は、ファーストネームとファミリーネームが父親のブッシュ元大統領と同じであるため、現大統領をジョージ・ウォーカー・ブッシュといい、父親の元大統領を単にジョージ・ブッシュと表記することはある。元大統領のミドルネームを入れて表記すると、ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュとなり、非常に煩雑なので、一般には現大統領のほうに「ウォーカー」というミドルネームを入れるようだ。ブッシュ親子の場合、このようにミドルネームを入れることに意味はあるのだが、オバマ次期大統領の場合、ミドルネームを入れる必要性がない。全てのミドルネームを入れる、という基準にすれば、この問題は解決されるのだが、件のコラムでは一番ミドルネームの必要性が認められるブッシュ現大統領にすら付けていないのに、オバマ次期大統領だけにミドルネームを入れるのは、印象操作として稚拙、と言われても仕方があるまい。私がもし同じ印象操作をするのであれば、マケイン氏とクリントン氏とブッシュ氏にもミドルネームを入れただろう。
で、ここからが本題であるが、我らが北条時輔様にはしっかりミドルネームがあった。相模三郎である。北条がファミリーネームとなる。時輔が諱。でミドルネームが相模三郎。このミドルネームの情報を解析すると、「相模」というのは父親の官途。父親の北条時頼が相模守だったからである。北条時茂の場合、父親が陸奥守の北条重時なので、陸奥弥四郎という。三郎、というのは時頼の子息の排行順。相模太郎北条時宗相模二郎相模四郎(さんにゃん氏のご指摘によって改める。ご指摘に感謝)が北条宗政、相模七郎が北条宗頼となる。実際の出生順は時輔・時宗・宗政・宗頼となるのだが、時宗と宗政の母が幕府の連署を務めた北条重時の娘で、時頼の性質である関係から、太郎と二郎を名乗り、母が御所の女房であった時輔は三郎に甘んじている。
北条義時の場合は北条小四郎義時である。この「小四郎」に関してはいろいろ考えられる。父親の北条時政が「北条四郎時政」だったので、「四郎」に対する「小四郎」という考えである。そして義時の兄が「三郎宗時」である。普通に考えれば「三郎」が上で「四郎」が下なので、時政の嫡男は「三郎宗時」ということになる。しかし時政のミドルネームも「四郎」ということは、義時が嫡男であった可能性も残されている。ただ義時は「江間小四郎義時」と出てくるので、「北条」ではなく、「江間」という北条氏の庶流を興したのではないか、という見方もある。義時は時政の息子としてではなく、武勇を見込まれて源頼朝の親衛隊「家の子」として台頭してきたのである、という見方である。時政の嫡男は六郎政範であった、という見方がある。小四郎義時と五郎時房はおそらく母は北条政子と同じで、六郎政範は牧の方を母としている。牧の方の出自が平忠盛に嫁ぎ、平家盛平頼盛を生んだ池禅尼を出した家であるというのが現在では有力視されている。この場合ミドルネームは単に所生順を示すものであり、序列とは無関係になる。