「関東新制条々」1 追加法337

弘長二年に出された「関東新制条々」全61条を読むシリーズ。
本文。

一 可如法勤行諸社神事等事
祭、豊年不奢、凶年不倹。是礼典之所定也。而近年神事等、或陵夷背古儀、或過差忘世費。神慮難測、人何有益。自今以後、恒例祭祀不致陵夷、臨時礼奠勿令過差。

読み下し。

一 法の如く諸社神事等を勤行すべき事
A 祭、豊年には奢らず、凶年には倹せず。これ礼典に定むところなり。
B しかるに近年神事など、或いは陵夷古儀に背き、或いは過差世の費えを忘る。神慮測りがたく、人何ぞ益有らん。
C 自今以後、恒例の祭祀は陵夷を致さず、臨時の礼奠は過差せしむるなかれ。

神社の祭礼については御成敗式目でも一条に掲げられている。神社の祭礼に関する条文を第一条に掲げるのは、単に幕府の信仰心を示すというよりは、鎌倉殿の祭祀権を法によって確定していることを示している。
Aでは祭礼は礼典に定められた通りに行うべきことを指示している。毎年の財政状況に応じて左右されるべきものではない、ということである。
Bでは現状が述べられている。「陵夷」というのは、次第に衰える、という意味。従って次第に衰微して本来定められたやりかたからずれている現状や、逆にぜいたくになって財政を圧迫している現状が指摘される。神にとっても、人にとってもいいことではない。
Cでは今後の方針。恒例の祭祀は衰微させず、維持させるように、臨時の祭礼はぜいたくになってはいけない、としている。「臨時」というのは、古くから行なわれてきた祭礼というよりは、最近新たに創出された祭礼を指しているのであろう。