「関東新制条々」11−追加法347
昨日、この「関東新制条々」について論じた佐々木文昭氏の『中世公武新制の研究』(吉川弘文館、2008年)を読んだ。その中で氏はこの「関東新制条々」の条文の分類をしておられる。神仏関係の条文の構成は、前半に寺社が行うべきこと、後半に御家人への規制が書かれている、という。確かに神社関係の条文は1が神事、2が本社の修造、3が神人問題で、4〜7が御家人役となっているし、寺院関係では8が仏事関係、9が本尊の修造であり、10が御家人による仏事に関して「過差」を禁止する撫民法ともいうべき条文で、今回取り上げる11が殺生禁断の条文となっている。
本文。
一 六斎日并二季彼岸殺生禁断事
魚鼈之類、禽獣之彙、重命逾山嶽、愛身相同人倫。因兹罪業之甚、無過殺生。是以仏教之禁戒惟重、聖代之格式炳焉也。然則件日々、早禁漁網於江海、宜停狩猟於山野也。自今以後、固守此制法、一切可随停止。若背禁遏、有違犯之輩者、可加科罰之由、可被仰諸国守護人并地頭等。但至有限神社之供祭者、非制禁之限。
読み下し。
一 六斎日ならびに二季彼岸の殺生禁断の事
A 魚鼈の類、禽獣の彙、命の重さは山嶽をこえ、身を愛するは人倫に相同じ。これにより罪業の甚だしきは、殺生に過ぐるなし。是を以て仏教の禁戒ただ重く、聖代の格式は炳焉なり。
B 然れば則ち件の日々、早く漁網を江海に禁じ、よろしく狩猟を山野に停めるべきなり。自今以後、固くこの制法を守り、一切停止に随うべし。もし禁遏に背き、違犯の輩あらば、科罰を加うべきのよし、諸国守護人ならびに地頭などに仰せらるべし。
C 但し限りある神社の供祭に至りては、制禁の限りにあらず。
この法令は六斎日(ひと月のうち、8日・14日・15日・23日・29日・30日)と、春秋の彼岸における殺生禁断を述べた条文。Aでは殺生禁断を施行する意図が述べられ、Bでは殺生禁断の施行が述べられている。Cではその例外規定である。