「関東新制条々」15−追加法351

裁判制度に関わる条文。
本文。

一 問注書下事
問状清書之仁、就訴陳状到来、不申入子細、無是非書上之条、沙汰依違之基也。自今以後、問状本奉行人請取訴陳等、申沙汰之。可書下之。

読み下し。

一 問注書下の事
問状を清書の仁、訴陳状到来に就き、子細を申し入れず、是非なく書き上げるの条、沙汰依違の基なり。自今以後、問状は本奉行人が訴陳状等を請け取り、これを申沙汰し、これを書き下すべし。

問注書下というのは問注所が発給する文書である。「書下」は下達文書で、書き止めが「状如件」となっている直状形式で、年付があり(つまり年号が書かれているということ)、差出者の命令の下達、権利の附与などの機能を持つ文書形式である。問注所の書下であるから、問注所の判決文と考えれば分かりやすい。問注所引付衆が設置されて以降はもっぱら雑務沙汰つまり債権や動産にかかわる裁判を扱うことになっていた。民事裁判の判決文である。
鎌倉時代の裁判は訴人(原告)が訴状を提出することから始まる。受付を担当したのは問注所である。問注所では所務沙汰つまり御家人の所領に関わる訴訟は問注所から引付衆に送られ、それ以外の雑務沙汰を問注所が担当した。鎌倉市中の雑務沙汰は政所の担当である。訴状が受け付けられるとこれを論人(被告)に伝達し、弁明を求める問状が出される。これはこの問状に関わる条文である。
問状を清書する担当者が子細を把握せずに書いてしまうのが判決の過ちの原因となるので、問状発給の手続きを厳格化したものがこの条文の内容である。