最判H7・2・28(その4)

引き続き判例の検討。

そして、地方自治について定める憲法第八章は、九三条二項において、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するものと規定しているのであるが、前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法一五条一項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法九三条二項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。

前に挙げた文で判例は外国人への参政権の付与について明確に否定した。その上で地方自治に関する参政権の付与について検討する。地方自治の場合「住民」が日本国民を含めるのかどうか、という議論が存在しており、「要請説」の立場に立てば、地方参政権定住外国人に付与することは憲法上要請されていることになるからである。
憲法九三条二項をみてみよう。

地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

要するに、この「住民」を第一五条の「国民主権」の「国民」に限定すべきか否かの議論をしており、判例は「地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当」として、「住民」を「国民」に限定している。従って憲法そのものにおいては「我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」と結論づけている。
そしてこれに続く一文で過去の判例を踏襲することを述べている。

以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和三五年(オ)第五七九号同年一二月一四日判決・民集一四巻一四号三〇三七頁、最高裁昭和五〇年(行ツ)第一二〇号同五三年一〇月四日判決・民集三二巻七号一二二三頁)の趣旨に徴して明らかである。

ここまでみてきた部分で一段落が形成されており、これで上告棄却の判決の主要な理由は述べ尽くされているわけであるが、この判例が「重要判例」として注目される所以は、この段落に続く段落である。ここで「許容説」に立つことが明確にされていく。