表現の自由覚書4

「知る権利」関連もう一発。
公立図書館で蔵書を恣意的に廃棄した、ということで人格権を侵害された、と著者が訴えた事件。これは先ほどの事件とは異なり、図書館司書が自分の好みで本を廃棄するのは是か非か、という問題。図書館でどの著作を残し、どの著作を廃棄するのかは司書の裁量の範囲内なのか、ということが争点になった。控訴審までは裁量の範囲内ということで、廃棄処分に違法性はない、ということであったが、最高裁は下記のような理由で東京高裁の判決を破棄し、差し戻しとした。

公立図書館は、思想・意見等の情報を含む図書館資料を住民に提供し、その教養を高めることを目的とする公的な場であり、著作者にとっては思想・意見等を公衆に伝達する公的な場であるから、閲覧に供されている図書を職員が独断的な評価や個人的な好みによって廃棄することは、公正に資料を取り扱うべき基本的な職務上の義務に反しており、思想・意見等を公衆に伝達するという著作者の法的保護に値する人格的利益を侵害するものとして国賠法上違法である。