チャルマーズ・ジョンソン 元カリフォルニア大学政治学教授

CIAの顧問も務めたチャルマーズ・ジョンソン 元カリフォルニア大学政治学教授のインタビュー記事(「http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/diamond-20100510-03/1.htm」)。まあこういう見方もできる、ということで、参考までに。
これまでの日米両政府の関係について。

 まったく悲劇的だ。両政府は1995年の米兵少女暴行事件以来ずっと交渉を続けてきたが、いまだに解決していない。実を言えば、米国には普天間飛行場は必要なく、無条件で閉鎖すべきだ。在日米軍はすでに嘉手納、岩国、横須賀など広大な基地を多く持ち、これで十分である。
そもそもこの問題は少女暴行事件の後、日本の橋本首相(当時)がクリントン大統領(当時)に「普天間基地をなんとかしてほしい」ということで始まった。この時、橋本首相は普天間飛行場の移設ではなく、無条件の基地閉鎖を求めるべきだったと思う。

この問題のそもそもの印象は鮮烈だ。米兵少女暴行事件がきっかけだった。そこから基地移転の動きがあったのだ。村山内閣時代ではなく、橋本内閣時代にこの交渉が始まった(そもそも村山内閣も橋本内閣も自社さ連立だから本質はあまり変わらない)のは、そういう理由がある。
その後も米兵による性犯罪は行われ、それについて一部マスコミが被害者を誹謗中傷したことがあった。

沖縄では少女暴行事件の後も米兵による犯罪が繰り返されているが、米国はこの問題に本気で取り組もうとしていない。日本の政府や国民はなぜそれを容認し、米国側に寛大な態度を取り続けているのか理解できない。おそらく日本にとってもそれが最も簡単な方法だと考えているからであろう。

全くその通りで、日本では「愛国」とか「保守」を名乗る人々によって被害者を誹謗中傷する世論が煽られた。彼らこそ「売国奴」という言葉がふさわしい。少なくとも日本国民が外国人によって性犯罪の被害に遭っているわけである。それを「ハニートラップ」と言って被害者を貶めた人々がいたことを忘れてはなるまい。
普天間の閉鎖と代替施設なしでの海兵隊のヘリ部隊の訓練について。

それは余った広大な敷地をもつ嘉手納基地でもできるし、あるいは米国内の施設で行うことも可能だ。少なくとも地元住民の強い反対を押し切ってまでして代替施設をつくる必要はない。このような傲慢さが世界で嫌われる原因になっていることを米国は認識すべきである。

そういう考えもある。
これについてジョンソン氏は次のように述べる。

しかし、普天間基地が長い間存在している最大の理由は米軍の内輪の事情、つまり普天間海兵隊航空団と嘉手納の空軍航空団の縄張り争いだ。すべては米国の膨大な防衛予算を正当化し、軍需産業に利益をもたらすためなのだ。米軍基地は世界中に存在するが、こういう状況を容認しているのは日本だけであろう。もし他国で、たとえばフランスなどで米国が同じことをしたら、暴動が起こるだろう。

米軍の海兵隊が沖繩から撤退した場合の中国・北朝鮮の脅威について。

 日本にはすでに十分すぎる米軍基地があり、他国から攻撃を受ける恐れはない。もし中国が日本を攻撃すれば、それは中国にこれ以上ない悲劇的結果をもたらすだろう。中国に関するあらゆる情報を分析すれば、中国は自ら戦争を起こす意思はないことがわかる。中国の脅威などは存在しない。それは国防総省や軍関係者などが年間1兆ドル以上の安全保障関連予算を正当化するために作り出したプロパガンダである。過去60年間をみても、中国の脅威などは現実に存在しなかった。
 北朝鮮は攻撃の意思はあるかもしれないが、それは「自殺行為」になることもわかっていると思うので、懸念の必要はない。確かに北朝鮮の戦闘的で挑発的な行動がよく報道されるが、これはメディアが冷戦時代の古い発想から抜け出せずにうまく利用されている側面もある。

今マスコミでは日米関係の悪化を懸念する声が高まっている。普段マスコミを「マスゴミ」呼ばわりするネット世論もこの問題ではマスコミに歩調を合わせる。

 普天間問題で日米関係がぎくしゃくするのはまったく問題ではない。日本政府はどんどん主張して、米国政府をもっと困らせるべきだ。これまで日本は米国に対して何も言わず、従順すぎた。日本政府は米国の軍需産業のためではなく、沖縄の住民を守るために主張すべきなのだ。

これは亀井静香大臣も言っていた(「亀井内閣府特命担当大臣繰上げ閣議後記者会見の概要(雑誌・フリー等の記者):金融庁」)。
小林至氏も

「米国型」ですとか、「欧米並に」などと、自分達を卑下して、西洋人に追従する声が強くなっている

と指摘し、その原因として「自分の根っこがないための混乱」を挙げている。小林氏は

不幸にも、戦争の反動か、米国の策略か、日教組のせいかどうかはわかりませんが

としている(「ホームページ移転のお知らせ - Yahoo!ジオシティーズ」)が、対米追随をしているのは日教組ではない。戦争の反動でもない。メディアや政府が「冷戦時代の古い発想から抜け出せずにうまく利用されている」からだ。米軍の犯罪を米軍よりも先に、大げさに隠し立てをし、あまつさえ被害者を誹謗中傷して、冤罪ではないかと煽るメディアが実在するのである。そしてそういう記事を書いた人物は今や大学の教授をやっている。
最後に沖繩に基地が集中している状況について。

 歴史的に沖縄住民は本土の人々からずっと差別され、今も続いている。それは、米軍基地の負担を沖縄に押しつけて済まそうとする日本の政府や国民の態度と無関係ではないのではないか。同じ日本人である沖縄住民が米軍からひどい扱いを受けているのに他の日本人はなぜ立ち上がろうとしないのか、私には理解できない。もし日本国民が結束して米国側に強く主張すれば、米国政府はそれを飲まざるを得ないだろう。

日本国民は結束することはなかなか難しい。「自分達を卑下して、西洋人に追従する声が強くなっている」現状、しかも自分達を卑下することを隠すためだけに愛国心を呼号するメディアが影響力を持つ現状においては「日本にとってもそれが最も簡単な方法だと考えているから」だ。