「関東新制条々」18−追加法356

ここから367条までは「過差禁制」つまり御家人に倹約を命じた条文。公家新制においても重要な規定でもあったが、360条から363条までには百姓臨時役を禁止する条文があり、その点においては「撫民法」と考えることが出来る。佐々木文昭氏の『中世公武新制の研究』(吉川弘文館、2008年)においては「公家新制を基礎としつつも、幕府内及び関係者・御家人の実情に合わせた詳細な規定となっている」とされている。佐々木氏のいう「詳細な規定」をしばらくみていく。
本文。

一 御儲事
引出物以下、各可存略儀。

読み下し。

一 御儲の事
引出物以下、おのおの略儀を存ずべし。

贈り物は簡素にしろ、というだけの条文。
何てことはない条文だが、贈与はしばしば便宜供与の舞台ともなる。後世の話になるが、足利直義は八朔のお贈り物の習慣を嫌い、一切受け取らなかった、という。八朔の贈り物は今のお中元の元祖だが、その辺はかなり頑固だったようだ。これは358に出てくる話。