動産の物権移動の中の「指図による占有移転」

AがCに動産乙を預けている。この乙をAがBに売却する場合、AB間で「AはBに占有権を譲渡する」という合意とAがCに対して「今後はBのために占有すること」を命じた上でBがこれを承諾する必要がある、という話。ここで「注意」と書かれているのは、占有移転を承諾するのがCではなく、Bである点。
考えればそらそうだ。
Aが乙を預けているCが倉庫業者である、としよう。
A「C倉庫さん、今お宅に預けている乙ね、あれ、Bさんに売ることにしましてん。そやさかいに乙はBさんが引き取りに来たらBさんに渡してね」
ここにCの承諾はあまり関係がないだろう。Cが「え〜、Bさんが来るんすか。勘弁してくださいよ」と言えるはずはない。
A「あ、Bさん?お宅に売る予定の乙ね、あれ、C倉庫さんに預けているからよろしくね。そこに引き取りに行って」
というAの発言に対してBが「はいはい、わかりました」となればいいが、Bさんが大阪の業者で、Aさんが京都の業者で、C倉庫が稚内にあった場合、「ちょっと待てや」となるだろう。
B「なんでおれが稚内まで引き取りに行かなあかんねん。おれ稚内に関係者もおれへんし、わざわざ行くんかい」となることも当然考えられるからだ。