動産の物権移動

上の話は「指図による占有移転」について。
不動産の場合は対抗要件として「登記」があるが、動産の場合は「引渡し=占有権の取得」が第三者への対抗要件となる。関連法令は民法178条。「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗できない」とある。さらに「占有権の取得」については180条から187条まで述べられているが、上の話に関係にあるのは182条から184条。
182条「?占有権の譲渡は、占有物の引き渡しによってする。?譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。」
182条1項「現実の引渡し」は今日の夕食の献立のカレーに必要な人参をスーパーで買う場合、「占有物」つまり人参の引渡しをレジで受ける。
2項「簡易の引渡し」は意志表示のみで占有権が移転する形式。たとえば本を人に貸していたが、その本を「その本あげるよ」となった場合、その意思表示だけで占有権の移転が成立する。
183条「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。」
これは「占有改定」と呼ばれるが、要するに取り置きと考えればいい。珍種のコリドラスが入荷した。しかしその日は仕事でいけない。こういう場合はショップに電話をする。
A「今度入荷したコリドラス・スーパーエクエスほしいんですけど」B「ああ、ではお取り置きしておきます」。この段階でコリの占有権はBからAに移転している。現物の引き渡しを待つまでもない。
そして上のエントリの話は184条。
184条「代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する」。これが「指図による占有移転」。