帆別銭の変質

画像は今川氏真

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国潰しスキルを持つ攻撃カードだが、コスト比がいいので砲防に使っている。コスト2.5で2500越えの兵力を誇る。鉄砲足軽にも焙烙火矢にも対応している。初期スキルはどうせ使い物にならないので、砲防スキルを追加できれば、よい砲防カードになる。ただ鉄砲はコスト比よりも兵数勝負という説もある。
戦国時代に「帆別」「帆役」という言葉が登場してくる例として黒嶋氏が挙げるのが今川氏真判物。そこでは「於彼船者帆役・湊役并出入之役」「免許訖」とある。今川氏真が藤二郎の船について、今川領国内での帆役・湊役・出入之役」を免除したもので、逆にいえば今川領国では工場的な入港料として帆役・湊役・出入之役が賦課されていたことが分かる。毛利領国でもあるいは海賊である因島村上水軍でも入港料や警固料として賦課されている事例を挙げている。黒嶋氏はいずれも史料をあげているが、ここでは今川特集ということで、毛利氏と村上水軍関係は無視w
問題は勧進であった帆別銭が、いつ、どのようにして恒常的な制度に変質したか、ということであるが、それについて黒嶋氏は二つの事情を指摘する。
一つは社会経済的な問題で、十五世紀後半には京都を中心とする荘園制的な流通制度が終末期を迎え、海運について言えば、十三湊をはじめとする港湾が縮小・廃絶していく過程である、という指摘について、黒嶋氏は、それらが単なる自然災害ではなく、流通機構の変質から説明されなければならないと主張する。またこの時期には船体の大型化が進むとされているが、それによって一艘ごとに定額を徴収していた従来の方式が行き詰まりを見せていた事情がある、という。
二つ目は、戦国大名による流通経済政策の進展。「今川仮名目録」を素材に黒嶋氏はそれを検討する。24条では「駿遠両国津料」を「停止」し、25条では「国質をとる事」「為私とるの輩ハ、可処罪過」と、26条では「駿遠両国浦々寄船之事、不及違乱船主に返へし」と定められている。24条、25条で今川氏の関与しない私的な徴収が禁止され、26条で在地による自由な寄船処分権を否定している。
津料の停止と国質の禁止と寄船処分権の否定は相互に連関があった。津料の自由な設定を放任すれば、高額な津料を設定して廻船の来航数を減少させる事態も生じるし、寄船慣行も廻船の来航数を減少させる要因となる。国質とは、債務者が債権者の負債返還要求に応じなかった時に、債権者が債務者の同国人または同国人の財産を私的に差し押さえることを指すが、その背景には国という政治的社会的結合の相互関係における強い一体感が存在する。地船と湊船の津料の賦課基準の違いや、入港船を寄船として抑留し得たのも、一体感の裏返しとしての「よそものを訝る心情」があった。しかし領国の経済振興を図る戦国大名からすれば、いかに「よそもの」を安定的に呼び寄せるかが課題である。津料の停止と国質の禁止と寄船処分権の否定は、「よそものを訝る心情」を前面に出させないためのものであった。
上杉謙信直江津の津料を「他国之舟」の招致策として在地から上杉氏の「役所」にその徴収権を一本化する、という政策を実行している。戦国大名にとって、津料という「よそものを訝る心情」への対策が重要であったことを示している、と黒嶋氏は指摘する。
戦国大名の領国への賦課は、室町期の守護の施行していた賦課を継承したもの、という理解が通説であるが、黒嶋氏は富樫昌家や京極持清や一色義遠などの室町期の守護には「よそものを訝る心情」を何とかしようと苦心する姿が見えず、津料の高額徴収に汲々とする室町期守護と、領国経済流通の安定を目指す戦国大名の間に連続性を認め難いとする。
戦国大名経済振興のために廻船招聘を図り、港湾ごとに独自に賦課されてきた津料を再編し、均質的な津料を賦課する必要があった。それに加えて、船体構造の進歩による航路の長距離化を考えれば、帆の大きさに即した賦課である帆別銭は、分かりやすい賦課方式として重用されたのではないか、と黒嶋氏は推定する。