QOLと生検

娘が生まれるとき、我が父は入院していたが、一時外出で駆けつけるはずであった。初孫である。
しかし娘が生まれる翌日に手術の日程が入り、その準備のために病院に拘束され、その願いはかなわなかった。
父は腫瘍を生じていた。父はQOL(生活の質)を重視してくれ、と医者に言っていた。医者はQOLのために生検が必要だといい、手術に踏み切ったのである。よく行われている手術だから、大丈夫だとも説得した。
手術の結果、父は四肢の機能を奪われた。そして余命もほとんどない、という。そして手術には失敗はなかった、と病院側はいう。
しかし父の患部の手術が極めて難しいのは、私のようなド素人でも知っている。それほどのリスクをあえて冒す必要があったのか、とか、そんなに急いでなぜ手術に踏み切ったのか、とか。結局医者にとっては、患者の願いや人生よりも、手術をした、という実績のほうが大事なのだろう。そして難しい患部の手術を成功させた、という実績を踏み台にして、病院内で出世していくのだろう。
某大学の教授は、救急車で運ばれて行く時に最後の力を振り絞って「府立医大に行ってくれ」というんだ、某大学の附属病院のレベルを教授は知っているから、というブラックジョークを聞いた事があるが、「火のないところに煙は立たない」ということだったのか、とやりきれない思いだ。